現代人の多くが悩んでいる「猫背」。長時間のデスクワークやスマホの使用、日常生活の中で、気づけば肩が内側に巻き込まれていたり、姿勢が崩れがちになります。
猫背が続くと、肩こりや腰痛、さらには呼吸が浅くなるなど、身体にさまざまな不調を引き起こします。改善しないままでいると、見た目にも悪影響が出て、日常生活に支障をきたすことも。
しかし、猫背の改善は単に背筋を伸ばすだけでは効果が薄く、根本的な原因を理解し、体の使い方を見直すことが重要です。
この記事では、猫背の原因やその改善方法に焦点を当て、効果的なトレーニングやストレッチ法を紹介します。
しっかりとした理論に基づいて、日常生活に取り入れやすい方法で猫背を改善し、美しい姿勢を手に入れましょう。
なぜ猫背になるのか?見直したい日常のクセと動作

猫背の原因は単に姿勢が悪いだけではなく、日常の動作やクセが大きく影響しています。
体の使い方が間違っていると、筋肉のバランスが崩れ、姿勢を維持するのが難しくなり、結果として猫背になってしまいます。
デスクワークやスマホで肩が内側に巻き込みやすくなる
現代人にとって、長時間のデスクワークやスマホの使用は日常的なことですが、これらの姿勢が猫背を引き起こす原因となります。
デスクワークやスマホを操作する際、どうしても体が前傾になり、肩が内側に巻き込まれてしまいます。
この姿勢を長時間続けることで、胸筋や肩の前側の筋肉が硬直し、肩甲骨周りの筋肉が使われにくくなります。
その結果、背中や肩の筋肉がうまく働かなくなり、猫背が悪化するのです。
これを防ぐためには、こまめに姿勢を意識的にリセットすることが大切です。また、肩甲骨を意識して動かすことで、猫背の予防になります。
お尻やもも裏を使いすぎて、姿勢を支える筋肉がサボっている
デスクワークが長時間続くと、お尻やもも裏の筋肉(ハムストリングス)が使われすぎてしまうことがあります。
これらの筋肉が過剰に使われると、体全体のバランスが崩れ、姿勢を支える背中や腰の筋肉がサボりがちになります。
特に、骨盤が後傾して腰が丸くなることが多く、これが猫背を引き起こします。
お尻やもも裏の筋肉の過緊張をほぐし、背中や腹筋を強化することが猫背改善には重要です。

定期的にストレッチを行い、筋肉のバランスを整えることが有効です。
片足重心や骨盤の傾きが筋肉のバランスを崩す
普段の立ち方や座り方にクセがあると、片足に重心がかかってしまうことがあります。このような状態が続くと、骨盤が傾き、筋肉の使い方が偏ってしまいます。
骨盤の傾きが原因で、姿勢を支えるための筋肉が上手く使われず、猫背が悪化します。
この問題を解決するためには、立ち方や座り方を意識的に改善し、両足に均等に体重をかけるように心がけることが重要です。
骨盤の位置を整えることで、筋肉のバランスも改善され、自然と良い姿勢が保てるようになります。
猫背を根本から直すための3つのポイント

猫背を改善するためには、ただ姿勢を正すだけでは不十分です。
体の筋肉や骨格に対する理解を深め、改善に必要な筋肉を正しく使うことが不可欠です。
胸や前肩のこわばりをゆるめるのが最初のステップ
内巻き肩が改善されない原因の一つは、胸筋や前腕の緊張です。
スマホやデスクワーク、日常の姿勢が続くと、肩が内側に巻き込まれてしまいます。
この内巻き肩を改善するためには、まず胸筋や前腕の筋肉をリリースすることが第一歩となります。
胸筋のストレッチを行って、硬くなった筋肉をほぐし、肩甲骨周りを自由に動かせるようにしましょう。
また、前腕の筋肉も同様に緊張しやすい部分なので、リリースすることで肩が外向きに開きやすくなります。
背中や肩の“鍛えすぎ”はかえって猫背を悪化させることも
背中や腕の外側の筋肉を鍛えることは、猫背を改善するために重要ですが、“外側を鍛えるだけ”では不十分です。
背中や腕の外側を過度に鍛えると、肩がさらに内向きになり、猫背が悪化することがあります。
猫背改善のためには、内側の筋肉を緩めてから、外側を適切に鍛えることが大切です。
外側の筋肉を強化しつつ、内側の筋肉をリラックスさせるバランスが重要です。

胸筋の緊張を解き、肩甲骨を外に引き寄せる筋肉を鍛えることで、理想的な姿勢に近づけます。
胸椎の動きを良くして、自然に背筋が伸びる体をつくる
猫背の原因の一つに胸椎(背中の上部)の硬さがあります。胸椎が硬くなると、背中が丸くなりやすく、猫背が悪化します。
胸椎の柔軟性を高めることで、肩甲骨の可動域も広がり、胸を開きやすくなります。
胸椎を柔らかくするためには、胸椎のストレッチや背中を反らすエクササイズを定期的に行うことが効果的です。
これにより、胸部が開き、姿勢が美しく整いやすくなります。
また、胸椎の柔軟性を高めることは、普段から良い姿勢を維持するためにも大切です。
猫背改善に効果的なストレッチ3選
猫背を改善するためには、単に背中の筋肉を鍛えるだけでは不十分です。
まずは内側(胸や肩前面)の筋肉を緩めて、正しい姿勢を取れる状態に整えることが先決。
その上で、姿勢を支えるための筋力を適切に鍛えることで、猫背は根本から改善されていきます。
大胸筋・前肩をリリース(内側を緩める)
デスクワークやスマホ操作によって、胸の筋肉が縮こまり、肩が前に引っ張られると猫背が固定化します。
これらをリリースすることで、胸が開きやすくなり、肩甲骨の自然な位置に戻しやすくなります。
まずは、大胸筋や肩の前側にアプローチする筋膜を緩めましょう。
手でほぐすだけでも非常に効果的です。マッサージガンなどがあれば、より手軽にほぐすことができます。

- 胸の横(鎖骨の少し下)に、手もしくはマッサージガンをあてます。
- ゆっくりと前後左右に動かして、硬くて痛気持ちいい部分を探します。
- 1箇所につき20~30秒程度揉み解します。肩前(肩峰の内側)も同様に行います。
呼吸を止めないこと、痛すぎる場合は無理せずに圧を弱めることが大切です。皮膚が擦れないよう、Tシャツやタオルを挟むか、ローションやオイルなどを使用しましょう。
胸筋ストレッチ
大胸筋を静的に伸ばすストレッチです。日常生活で縮こまりがちな胸の前面を開き、姿勢を整える準備をします。
胸が開かないと、肩が内巻きになり猫背になります。胸筋をストレッチすることで、胸が広がりやすくなり、肩甲骨の位置も安定します。
- 壁やドアの角に立ち、片腕を肩の高さに上げて、肘を90度に曲げます(L字になるように)。
- 肘と前腕を壁につけたまま、体を反対方向にゆっくりひねります。
- 胸の前側がじわっと伸びている感覚があればOK。
- そのまま20〜30秒キープ。
- 左右を入れ替えて同様に行います。
伸ばすことに意識が向きすぎると肩をすくめがちなので、首と肩はリラックスして行います。反動はつけずに静かに行うことがポイントです。
回旋ストレッチ
肩が内巻きになってしまう人は、胸の回旋動作が制限されていることが多いため、それを改善する目的で行います。
胸椎の回旋可動域が広がると、肩甲骨がスムーズに動き、肩が開きやすくなります。結果として、背筋が自然に伸びた姿勢を取りやすくなります。

- 横向きに寝ます(膝を90度ほど曲げて、両脚をそろえて重ねる)。両手を胸の前で合わせるように伸ばします(手のひら同士が合わさるように)。
- 上側の腕をゆっくりと反対側へ開いていきます(本を開くような動作)。胸をしっかりと開いて、目線も開いた手の方向へ向けます。
- 胸と肩が気持ちよく伸びる位置で10〜20秒キープ。
- ゆっくり元に戻して、5回ほど繰り返します。
- 反対側も同様に行います。
骨盤が一緒に回らないよう、膝がずれないように注意しましょう。必要なら膝の下にクッションを置くと安定します。
無理に腕を床に付けようとせず、自分の可動域で気持ちよく伸ばすのがコツです。
腰が反らないように注意して、動作はゆっくり、呼吸を止めずに行うことで可動域が広がりやすくなります。
猫背改善に効果的な筋トレメニュー2選
ダンベルリバースフライ
肩甲骨を引き寄せる力が弱いと、肩が前に出たまま戻らなくなります。リバースフライによってその筋肉を鍛えることで、背中が引き締まり、自然と良い姿勢をキープできるようになります。
肩甲骨を内側に引き寄せる動きを強化するためのトレーニング。主に僧帽筋中部・菱形筋といった背中のインナーマッスルに効きます。
関連記事:自宅でできる背中の筋トレ!コツと注意点について解説

- 両手に軽めのダンベルを持ちます(女性なら1〜3kgくらいがおすすめ)。
- 足を腰幅に開いて立ち、膝を軽く曲げます。お尻を軽く引いて、上半身を45度くらい前傾させます(背筋はまっすぐ)。
- ダンベルを肩の真下で構え、肘を軽く曲げたまま、肩の高さまで左右に開いていきます。肩甲骨を寄せるイメージで開き、胸を張るように動かします。
- 上げきったら1秒キープして、ゆっくりと戻します。
- 10〜15回を1セットとして、2〜3セット行いましょう。
勢いで振り上げず、ゆっくりコントロールして行うのがポイントです。
肩に力が入りすぎると首をすくめやすいので、肩甲骨を意識して動かしましょう。背中が丸まらないように体幹を保ったまま行います。
関連記事:【初心者向け】効果的なダンベルトレーニングメニューについて解説
バードドッグ
猫背の原因には体幹の弱さも関係しています。バードドッグで体幹が安定することで、自然と背筋が伸び、良い姿勢を保ちやすくなります。
体幹の安定と背面全体のバランスを整える自重トレーニング。姿勢維持に重要な脊柱起立筋や腹横筋を鍛えられます。
関連記事:自宅で簡単!バランスボールを使った体幹トレーニングメニュー

- 四つ這いの姿勢をとります。肩の真下に手首、股関節の真下に膝がくるように調整し、背中はまっすぐ、視線は床へ向けます。
- 右手と左脚を同時にまっすぐ伸ばします。背中を反らせず、腕と脚は床と平行になるよう意識しましょう。
- その姿勢を3〜5秒キープします。お腹とお尻に力を入れて、体が左右にブレないように保ちます。
- ゆっくりと元の四つ這いの姿勢に戻します。
- 今度は左手と右脚を同じように伸ばし、同様にキープして戻します。
- 左右交互に10回ずつ、2〜3セットを目安に行います。
腰が反らないように注意しながら、リズムよく繰り返すと、体幹の安定感が高まり、姿勢も整いやすくなります。
骨盤が左右に揺れないように注意しましょう。動作をゆっくり行うことで、より深くインナーマッスルに効かせることができます。
まとめ
デスクワークやスマホ使用時の姿勢、片足重心や骨盤の傾きなど、無意識に行っている動作が猫背を助長していることが多いです。
まずは、胸筋や前腕の緊張をリリースすることで内巻き肩を改善し、背中や腕の外側を鍛えるだけではなく、柔軟性を高めることも重要です。
あなたも、日常的に取り入れやすいトレーニングを試して、理想的な姿勢を手に入れましょう。