転倒によるケガは、シニア世代にとって大きなリスクです。「ちょっとつまずいただけ」と思っても、骨折や寝たきりにつながることも少なくありません。
実際、65歳以上の3人に1人が1年に1回以上は転倒しているというデータもあり、これは決して他人事ではない問題です。
本記事では、シニア世代が転倒を防ぐために取り入れたい「姿勢改善」と「体幹トレーニング」に焦点を当て、今日から無理なく始められる運動法をご紹介します。
「転ばぬ先のトレーニング」で、健康寿命をのばす第一歩を踏み出しましょう。
シニアの転倒を防ぐには「姿勢と体幹トレーニング」が最優先

年齢を重ねるにつれて増える悩みのひとつが「転倒」です。シニア世代の転倒は骨折や寝たきりにつながる深刻な問題ですが、実は“姿勢”と“体幹”の強化が最大の予防策になります。
単なる筋トレやストレッチだけでなく、「転ばない体の使い方」を身につけることが、健康寿命を延ばす鍵となります。
とくに「歩く」「立ち上がる」「バランスをとる」といった日常動作は、体幹が安定してこそスムーズに行えます。
今からでも遅くありません。まずは姿勢を見直し、体幹を鍛える習慣を始めましょう。
体幹を鍛えると転倒リスクが格段に減る
体幹とは、腹筋や背筋、骨盤周囲の筋肉を含む「体の中心部」のことを指します。
ここがしっかり働いていると、身体のブレが抑えられ、ふらつきやすい場面でも安定した動きが可能になります。
シニア世代にとっては、何かにつまずいたときに「踏ん張れる力」があるかどうかが、転倒するかしないかを左右します。
とくに注目したいのが、体幹を意識したバランス運動です。片足立ちや椅子に座った状態での骨盤まわりの運動など、負担が少なく取り組める方法も多くあります。
りゅうけん体幹を鍛えることで「反射的な姿勢の安定性」が養われ、思わぬつまずきにも柔軟に対応できるようになります。
「歩く」「しゃがむ」など日常動作を支える姿勢力
姿勢が崩れると、体の一部に過剰な負担がかかり、スムーズな動作がしにくくなります。
たとえば猫背や骨盤の後傾があると、脚の筋肉が正しく使われず、歩くときに足が上がらなくなったり、ふらついたりするリスクが高まります。
正しい姿勢とは、骨盤が立ち、背骨が自然なカーブを保ち、重心が真ん中にある状態です。この状態を保つには、背中やお腹、太もも、足の筋肉など、全身の筋肉がバランスよく使われていることが大切です。
つまり、姿勢を整えることは「筋トレやストレッチとは別の話」ではなく、すべての動作の“土台”になるということです。
まずは、自分の立ち姿や歩き方を見直し、必要な筋力を補うトレーニングを始めましょう。
今すぐできる!転倒防止に効果的な簡単トレーニング
転倒を防ぐためには、特別な道具や長時間の運動は必要ありません。まずは「今日からできる」「家の中でできる」ことをコツコツ続けることが大切です。
姿勢とバランスを整え、日常生活の中で自然と転びにくい体づくりを進めましょう。
前脛骨筋を鍛えるつま先・かかと体操
つま先が上がらないと、歩いている最中にちょっとした段差やカーペットに引っかかって転びやすくなります。
この「つま先を持ち上げる筋肉」が前脛骨筋(ぜんけいこつきん)です。ここを鍛えることで、足元のつまずきを防ぎやすくなります。


- 椅子に座ったまま、片足のつま先をゆっくりと持ち上げてみましょう。このとき、かかとは床につけたままでOKです。
- つま先を上げたら、またゆっくりと元の位置に戻します。
- この「上げて、下ろす」を交互に繰り返してみてください。
脛の外側にじんわりと効いてくる感覚があれば、前脛骨筋がしっかり使われているサインです。
りゅうけん毎日少しずつ続けることで、転倒を防ぐ力が自然と身についていきますよ。
上記の運動が難なく行えるという方は、「つま先とかかとを交互に上げる体操」もおすすめです。やり方はとても簡単です。


- 右足のつま先を上げ、同時に左足のかかとを上げます。
- 次に、左足のつま先と右足のかかとを上げます。
- 交互にゆっくり10回ずつ繰り返してください(※ふらつく方は壁や椅子を支えに)。
この体操は前脛骨筋だけでなく、ふくらはぎや足裏の感覚も鍛えられます。
1回ごとに足を一度全部床に付けて休んでから動かしても十分効果がありますので、無理なく続けていきましょう。
壁を使って体幹バランスチェック
体幹がしっかりしているかを確認する簡単な方法に「壁立ちチェック」があります。
体幹とは、姿勢を支えたりバランスを取ったりする全身の中心の筋肉群です。このチェックを通じて、自分の体のクセや筋力不足に気づくことができます。
- 壁に背を向けて立ち、かかと・お尻・背中・後頭部を壁にくっつける
- このとき腰の後ろに手のひら1枚分の隙間があるのが理想です
- その姿勢で30秒キープできるかチェックしてみましょう
壁から体が離れてしまったり、姿勢を保てない場合は、体幹や姿勢筋に弱さがあるサインです。
毎日30秒、正しい姿勢を「思い出す」だけでも、バランス力は着実に上がります。
りゅうけん慣れてきたら、壁を使わず同じ姿勢で立つトレーニングにも挑戦してみてください。
水分補給も忘れずに!ミネラル不足が筋肉の不調を招く
筋肉のけいれんや「足がつる」といった症状は、運動不足だけでなく、体内の水分やミネラルの不足が原因となることがあります。
特にシニア世代では、加齢により体内の水分保持力が低下しやすく、脱水状態に気づきにくくなっている場合も少なくありません。
こまめな水分補給と、ナトリウム・カリウム・マグネシウムなどのミネラルを含む飲料を意識して摂ることが大切です。運動前後だけでなく、普段の生活の中でも「喉が渇く前に一口」を心がけましょう。
また、朝方や夜間に足がつりやすい人は、体の水分バランスが崩れているサインかもしれません。そんなときは、日中の水分摂取を見直すとともに、就寝前にコップ一杯の白湯を飲むなどの工夫もおすすめです。
そもそもなぜ転倒しやすくなるのか?加齢による身体の変化とは

転倒は、シニア世代にとって非常に身近なリスクです。転んでしまったあとに骨折や入院につながるケースも少なくなく、健康寿命を左右する大きな要因といえます。
では、なぜ年齢を重ねると転びやすくなるのでしょうか?
その理由は、筋力や姿勢の変化など、加齢による「体の変化」が大きく関係しています。
前脛骨筋の低下が「つまずき」の第一歩
歩いているときにちょっとした段差やカーペットの端でつまずいた経験はありませんか?それは、足を前に出すときに「つま先がしっかり上がっていない」ことが原因かもしれません。
つま先を持ち上げる筋肉──それが「前脛骨筋(ぜんけいこつきん)」です。
前脛骨筋はスネの前側にある筋肉で、歩行時につま先を引き上げる働きをします。加齢とともにこの筋肉が衰えると、足が上がりきらず、地面を引きずるような歩き方になりがちです。
その結果、わずかな段差や滑りやすい床でもつまずいてしまうリスクが高まります。
さらに、ふくらはぎや足裏の筋肉も合わせて弱くなっている場合、踏ん張る力も不足し、転倒につながりやすくなります。
とくに「足がつりやすい」「冷えやすい」という方は、前脛骨筋の働きが低下しているサインかもしれません。
りゅうけん日々のトレーニングで、意識的にこの部分を動かしていくことが重要です。
猫背・骨盤の後傾が身体のバランスを崩す
もう一つ見逃せないのが、「姿勢の崩れ」です。加齢とともに筋力が低下すると、背すじが丸まり、いわゆる「猫背」の状態になりやすくなります。
さらに、骨盤が後ろに傾く「骨盤後傾」の姿勢が加わると、体の重心が後方にずれてしまい、バランスを取るのが難しくなってしまいます。
猫背や骨盤の後傾は、見た目だけでなく、歩行や立ち座りといった日常動作にも大きな影響を与えます。背中が丸まると視線が下がり、前が見えづらくなるため、障害物に気づくのが遅れてしまうことも。
骨盤が後傾すると、足が前に出にくくなり、歩幅が小さくなることで、歩行の安定感が損なわれます。
このような姿勢の変化は、無意識のうちに積み重なり、転倒リスクを高めてしまいます。
姿勢のクセはすぐには変わりませんが、少しずつ体幹トレーニングやストレッチを取り入れることで、バランスの取れた姿勢を取り戻すことが可能です。
関連記事:猫背改善が見た目と体調を変える!肩こり・頭痛・やる気低下を防ぐには?
まとめ
シニア世代の転倒は、加齢による筋力の低下や姿勢の崩れが大きな要因となります。特に、つま先を上げる「前脛骨筋」や、体幹を支える筋肉の衰えは、つまずきやすさに直結します。
しかし、正しい姿勢を意識し、日常に簡単なトレーニングを取り入れることで、転倒リスクは大きく減らすことができます。椅子に座ったままの運動や、壁を使ったバランスチェックなど、無理のない範囲から始めることが大切です。
また、水分不足やミネラル不足も筋肉の働きに影響を与えるため、内側からのケアも忘れずに行いましょう。
「転ばない体」は一日にしてならず。でも、今日1分でも体を動かすことで、未来の健康寿命を大きく変えられます。まずはできることから始めて、安心して動ける体づくりを続けていきましょう。


